八極拳
漫画『拳児』や『バーチャファイター』、そして怪しい神父まで、サブカル界で抜群の知名度を誇る門派です。
もともとは河北省滄州の呉一族に伝承されてきた門派でしたが、戦前中国における半官半民の武術団体「中央国術館」の教材の一つとなって以降、世に知られるようになりました。
そして1970年代以降、日本人の中国武術研究家・松田隆智氏が台湾に伝わった八極拳を学び、日本で紹介してからは、日本の武術愛好家の間にも広く知られるようになりました。
技術的には肘打ちや体当たりなどの接近戦の技が豊富で、一発一発、全身の力を使って打ち込むスタイルは、まさに「一撃必殺」といった雰囲気です。
螳螂拳
これまた漫画『拳児』や『バーチャファイター』にも登場した、カマキリ拳法こと螳螂 拳です。伝説ではカマキリの動きをヒントに技を工夫したとされ、競技套路ではかなりカマキリに「よせてる」動作もあるのですが。伝統套路ではそんなにカマキリっぽくないです。
こちらは山東省で伝承されてきた門派で、戦前から続く民間団体「精武体育会」を通じて中国各地に知られるようになりました。日本では故・松田隆智氏が台湾で学んだ系統や、「日本老螳螂拳研究会」の皆さんが伝える山東省で学ばれた系統が有名です。
当サークルで学ぶのは、台湾の故・高道生先生が創設した長拳螳螂門の螳螂拳です。実は私が初めに学んだ武術・格闘技が、この長拳螳螂門であり、思い入れの深い門派の一つです。
螳螂拳はもともと十八の門派を総合して創出されたという伝承があり、その技が非常に豊富です。中国武術のコンビネーションや戦略を知るにはうってつけの門派と言えます。
翻子拳
主に中国の東北地方や西北地方で伝承されている門派です。突きに秀でた門派で、型は比較的短く、ラッシュをかけるように一気に連打やコンビネーションを打ち込みます。
まるで豪雨のように降り注ぐパンチは迫力満点ですが、翻子拳を学ぶ人の中には、摑みや関節技が得意な鷹爪拳、蹴りが得意な戳脚といった他門派を併修したり、それらの門派の技法を取り入れたりする人も少なくありません。当サークルでも、初めに翻子拳を学んだ後、蹴り技主体の戳脚も学んでいく予定です。
またボクシングや散打でも使いやすい技法が多いので、当サークルの格闘技班のメンバーも主にこの翻子拳を学んでいます。
剣
日本の漢字では刀と剣をあまり区別して使用していませんが、中国では剣はまっすぐな刀身で両刃の武器、刀は弧を描いた刀身で刀刃の武器と、明確に区別しています。
剣はもっとも古い武器の一つで、古代中国では剣と言えば青銅製の幅広いが短い刀身を持つ短剣のことでした。それが製鉄技術の向上により、その刀身を細く、長くつくることができるようになり、今の剣の形となったと言われています。
また剣は刺突に優れた武器であり、刀のように叩きつけたり、なで斬りにしたりといった使い方はあまりしません(おそらく細長い刀身では簡単に折れてしまうからでしょう)。
なお剣は刀の発明により戦場でほとんど使われなくなりました。一方、その優美な姿から、剣舞や護身術として民間で好まれ、特に知識人や官僚が好む「文化的な」武器となり、剣術も舞いのように優雅なものが多いです。
刀
刀は剣に比べて刀身が太く、刃が曲線を描いています。その太く弧を描いた刀身を用いて、相手を叩き切ったり、なで斬りにしたりするのに適した武器です。ですので刀術では、突きよりも大きく振りかぶった斬撃が多用されます。
もともと刀は長剣から発展してきた武器です。中国では漢の時代ごろに、騎馬戦が本格導入されましたが、馬上で駆け抜けながら勢いよく相手を攻撃するさいには、細長く両刃、しかもまっすぐな長剣では簡単に折れてしまいます。そこで刀身を太く、なで斬りに適するように弧を描くように改良したニュー・ウェポン、すなわち現在の刀の原型が発明されました。
以後、この刀の柄を長くした大刀(関羽の青龍偃月刀とかです)や、藤牌(固い藤のツルを編んで作った盾)といっしょに使用された腰刀(片手用の刀)など、いろいろなバージョンの刀が作られ、清代末期まで戦場で使われ続けました。
・・・と、武器の歴史を書きだすと止まらないのでこのへんで(続きはコーチが執筆した『月刊 秘伝』掲載の『中国伝統武器の手触り』参考のこと)。
その他にも、棍や槍、中国式の杖術や太刀術なんかもやりますので、武器術に興味のある方も是非お越しくださいませ。